初恋のつづき
「……ああ。よく覚えてたな」
「ふふっ、やっぱり!そりゃあ覚えてますよー。だって、その片方を私の耳に付けて、あの曲、聴かせてくれたでしょう?」
放課後、茜色が差し込むあの空き教室で。
あの日は、同じ空間にいながらもそれぞれ個々の時間を過ごしていた私たちが、初めて同じ時間を共有した瞬間だった。
私の中で、あれは大切な思い出だから。
だから、ちゃんと覚えてるよ。
「さすがに今はもっと性能の良いやつ使ってるけど、あの曲は今でもたまに聴いてる。……聴く?」
「聴く!」
目を輝かせながら即答した私に眦を下げた名桐くんは、ポケットからイヤフォンケースを取り出し、その中から摘んだ一つを私に差し出した。
月明かりと、等間隔に並ぶ街灯に照らされたそれは確かに高校の時と形は違うけれど、色は変わらずブラックだった。
「ん」
「これ、右、左どっち?」
「左」
「付けて!」
私は名桐くんの前に回り込み、左サイドの髪を耳に掛け、それをそのまま彼に向かって突き出す。
普段の私なら絶対に取らない行動だけど、程よく酔いの回っている頭はふわふわとしていて、考えるよりも先に、口と身体が勝手に動いていた。
「ふふっ、やっぱり!そりゃあ覚えてますよー。だって、その片方を私の耳に付けて、あの曲、聴かせてくれたでしょう?」
放課後、茜色が差し込むあの空き教室で。
あの日は、同じ空間にいながらもそれぞれ個々の時間を過ごしていた私たちが、初めて同じ時間を共有した瞬間だった。
私の中で、あれは大切な思い出だから。
だから、ちゃんと覚えてるよ。
「さすがに今はもっと性能の良いやつ使ってるけど、あの曲は今でもたまに聴いてる。……聴く?」
「聴く!」
目を輝かせながら即答した私に眦を下げた名桐くんは、ポケットからイヤフォンケースを取り出し、その中から摘んだ一つを私に差し出した。
月明かりと、等間隔に並ぶ街灯に照らされたそれは確かに高校の時と形は違うけれど、色は変わらずブラックだった。
「ん」
「これ、右、左どっち?」
「左」
「付けて!」
私は名桐くんの前に回り込み、左サイドの髪を耳に掛け、それをそのまま彼に向かって突き出す。
普段の私なら絶対に取らない行動だけど、程よく酔いの回っている頭はふわふわとしていて、考えるよりも先に、口と身体が勝手に動いていた。