初恋のつづき
「……ん?どうした?」
「いや、すみません……。懐かしい曲が流れてきたもので、つい……」
はは、と誤魔化しながら喉を潤そうとして飲もうとしたアイスコーヒーのストローに、あろうことかプイッとそっぽを向かれる。
親指と人差し指で摘んで、今度は逃げられないように口へと持っていった。
「これ?何て曲?」
「〝ジュ・トゥ・ヴ〟です」
「ジュ・ジュ……?」
呟きながら真瀬さんの眉間に皺が寄る。
「ふふっ。エリック・サティのクラッシックなんですけど、当時は私も知らなくて、初めてタイトル聞いた時同じ反応して笑われました」
「おー、その顔。さては、青春の甘酸っぱいカシオレみたいな思い出だな?」
「……真瀬さん。青春の甘酸っぱさをお酒で例えないで下さいよ。なんか、急に不健全になった……」
「ははっ。まぁまぁ。で?」
私のツッコミにいたずらっ子のような笑みを乗せた真瀬さんは、続きを促した。
「うっ……。なんかこれ、シラフで話すの恥ずかしいんですけど……」
「聞きたくなるような顔するお前が悪い」
「ひどい言いがかり……!……でも、別に聞いたって面白くも何ともないと思いますよ?」
「いいから」
真瀬さんは、一度言い出したら聞かない人だ。それは仕事でも、プライベートでも。こうなってしまったら、私が話すまで引き下がってはくれないだろう。
ふぅ、と観念して私は話し出す。
「……うーん、甘酸っぱい、というよりは、むしろほろ苦いって感じの思い出なんですけど。お察しの通り、当時好きだった人がいつも聞いてた曲なんです」
「ほぉー。そりゃ随分と崇高な趣味を持った男だったんだな。どこぞの坊ちゃんとかか?」
「いえいえ、全然です」
マスターのサイフォンでコーヒーを淹れる音が、〝ジュ・トゥ・ヴ〟の跳ねるような軽快なピアノの音と重なり合う。
私は苦笑して、当時の彼の姿をかなり久しぶりに頭の中に思い描きながら言葉を紡いだ。
「いや、すみません……。懐かしい曲が流れてきたもので、つい……」
はは、と誤魔化しながら喉を潤そうとして飲もうとしたアイスコーヒーのストローに、あろうことかプイッとそっぽを向かれる。
親指と人差し指で摘んで、今度は逃げられないように口へと持っていった。
「これ?何て曲?」
「〝ジュ・トゥ・ヴ〟です」
「ジュ・ジュ……?」
呟きながら真瀬さんの眉間に皺が寄る。
「ふふっ。エリック・サティのクラッシックなんですけど、当時は私も知らなくて、初めてタイトル聞いた時同じ反応して笑われました」
「おー、その顔。さては、青春の甘酸っぱいカシオレみたいな思い出だな?」
「……真瀬さん。青春の甘酸っぱさをお酒で例えないで下さいよ。なんか、急に不健全になった……」
「ははっ。まぁまぁ。で?」
私のツッコミにいたずらっ子のような笑みを乗せた真瀬さんは、続きを促した。
「うっ……。なんかこれ、シラフで話すの恥ずかしいんですけど……」
「聞きたくなるような顔するお前が悪い」
「ひどい言いがかり……!……でも、別に聞いたって面白くも何ともないと思いますよ?」
「いいから」
真瀬さんは、一度言い出したら聞かない人だ。それは仕事でも、プライベートでも。こうなってしまったら、私が話すまで引き下がってはくれないだろう。
ふぅ、と観念して私は話し出す。
「……うーん、甘酸っぱい、というよりは、むしろほろ苦いって感じの思い出なんですけど。お察しの通り、当時好きだった人がいつも聞いてた曲なんです」
「ほぉー。そりゃ随分と崇高な趣味を持った男だったんだな。どこぞの坊ちゃんとかか?」
「いえいえ、全然です」
マスターのサイフォンでコーヒーを淹れる音が、〝ジュ・トゥ・ヴ〟の跳ねるような軽快なピアノの音と重なり合う。
私は苦笑して、当時の彼の姿をかなり久しぶりに頭の中に思い描きながら言葉を紡いだ。