初恋のつづき
「むしろ、いつも制服を着崩してて、耳にピアスもいっぱい付けてて。金髪に近い明るい琥珀色の髪はちょっと長めで、授業もフラッとサボるような、なんて言うか、いわゆる不良って呼ばれる部類の人でした」

「クラシックを聴く不良って、何かギャップがすげぇな。でも、昔から堅実そうな有賀がそういう男に惹かれるの、なんか意外」

「怖い人ではなかったんですよ。暴力とかケンカとかそういうのはなくて、ただただ無口で硬派な一匹狼の不良というか」

「へぇー。で?そのエリックくんと、付き合ってたの?」


……真瀬さんの中で、彼はエリックになってしまったらしい。エリック・サティのエリック。

あのビジュアルにエリック……。

ちょっと面白い。


「まさか。彼には好きな人がいたので、結局告白しないまま卒業してそれきりです」

「好きな奴がいたって、告白してみたら有賀が選ばれる可能性だってなきにしもあらずだったんじゃない?男なんて、好きって言われたら少なからず意識しちゃう生きもんよ?もったいねぇなぁ」


真瀬さんのその一理ありそうな言い分に、私から思わず苦い笑みが溢れる。


「んー、当時の私が、例えば真瀬さんくらいビジュアルが良かったりコミュ力が高かったり、どこかしら自分に自信の持てる要素が一つでもあったなら、そのワンチャンに賭けてそんな当たって砕けろな選択肢も選べたかもしれませんねぇ。
でも、彼の好きだった人はとても素敵な人でしたから。さすがにそれに立ち向かう度胸と勇気はありませんでしたよ」


サラッと横に流している前髪に、顎下と鎖骨の間くらいの長さのミディアムボブはモカブラウン。

オフィスでも浮かないデザインのブラックのビックカラーブラウスにベージュのセンタープレスパンツ。

自社のコスメチャンネルで日々学んでいるメイク術を施した童顔。

何かと人目につく指先も、ネイルサロンで綺麗に色を乗せてもらっている。

今でこそ、こうして努力するようになって割と小綺麗な見た目をしているけれど、高校時代の私は残念ながらそうではなかった。
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