王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
「おい、まだ時間があるし茶でも飲んでいくか?」

 いつもなら決して自分から誘わないのに、気づけばライオネルはそんなことを口走っていた。

 エイミーが少し驚いた顔をした後で、にこりと、これまた手本のような笑みを浮かべる。

「いえ、今日はこれで。殿下もお忙しいでしょうから」

「そうか……」

 断られて、胸が痛いのはどうしてだろう。

(そういえば……今日はクッキーがないんだな)

 いつも週末には必ず持ってくる手作りクッキーが、今日はない。

 エイミーが丁寧に楽譜を片付けると、もう一度ライオネルに向かって一礼して、防音室を出ていく。

< 120 / 233 >

この作品をシェア

pagetop