王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
(なんでもやもやするんだろう……)

 ぼんやりしていると、エイミーが風邪を引く前、この部屋でケビンに言われたことを思い出した。

 ――モモンガは人の言葉を理解しませんが、人間は人の言葉を理解します。そして言葉は、人を喜ばせることもあれば傷つけることもあるのです。

 何故今、その言葉を思い出すのか。

(俺はあのモモンガを……エイミーを、傷つけたのか?)

 だが、何で傷つけたのか、ライオネルはわからなかった。

 何故ならライオネルはずっといつも通りだったはずだ。いつも通り、何も変わらない。今更あのモモンガが傷つくことなんて何一つないはずなのに――

「……俺は、傷つけてなんか、ない」

 ライオネルは、自分自身に言い聞かせた。

 そうしないと――何故だが、幼い日に転んで泣いたエイミーの泣き顔が頭の中をちらついて、離れなかったからだ。


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