王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 わかっている。わかっていた。

 でも、それをほかの人の口から言われると――指摘されると、それがまぎれもない事実なのだと突きつけられるようで、ちゃんとわかっていたのに胸が痛い。

「エイミー、あんた、殿下に愛されないままの結婚生活を送りたいの? 婚約して十一年変わらなかったものが、結婚後に変わるとか、そんな希望は捨てたほうがいいわ」

「……わかっているわ」

「わかっていないわ、エイミー。ううん、わからないふりをしているのよ、あんたは。そろそろ現実を見ないと、そのうちあんた、ボロボロになっちゃうわよ」

 そうかもしれない、とエイミーはずきずきと痛む胸の中で思った。

 現実から目を背けてライオネルを追いかけまわして、そうしていればそのうち振り向いてくれるのではないかと、振り向いてくれるはずだと、自分に言い聞かせてきたのかもしれない。

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