王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
☆☆☆

「薬ですか?」

 一方そのころ、ライオネルは仏頂面で医務室を訪れていた。

「エイミーが逃げた」

 ウォルターが水とともに手渡してくれた頭痛薬を受け取って、ライオネルはむすっと言う。

 ぷはっとウォルターが噴き出した。

「やるなあエイミー様」

「感心するな! あいつのクラスメイトに聞いたところ、鐘が鳴ると同時に教室を飛び出して行ったそうだ。……くそっ、明日は鐘が鳴る前に教室の前で待ち伏せしてやる」

「何無理なことを言ってるんですか。殿下だって授業があるでしょうに」

「…………じゃあお前が待ち伏せしろ」

「人の力を頼ったらダメですよー」

 ライオネルはむーっと眉を寄せる。

 ウォルターは肩を震わせて笑いながら、自分の昼食用だろう、パンの詰まった袋からサンドイッチを取り出すとライオネルに差し出した。

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