王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 そう――笑い事ではないのだ。

 何故ならエイミーは、ライオネルと別れる気でいるのだから。

 いくらウォルター相手でも、さすがにエイミーから別れ話を切り出されたとは言えない。だが、昔からの付き合いのウォルターは、おおよその検討をつけてはいるはずだ。

「エイミー様と別れたかった殿下としては、都合がいい状況じゃないんですか?」

 ウォルターがふと笑みを消して、静かに訊ねた。

 ライオネルはサンドイッチを食べるのをやめて顔を上げる。

「…………お前、わかっていて言ってるだろう」

「さて、どうでしょうか」

 こういうとき、ウォルターは意地が悪いと思う。

(俺だって、意味不明なことをしていることくらいわかっているさ)

 別れたかったのは、ライオネルの方だった。

 間違いなく、ライオネルはエイミーと別れたかったはずなのだ。

 それなのに――望んだとおりにエイミーから別れを切り出されたはずなのに、今はこんなに焦っている。

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