王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 本当にライオネルはどうしてしまったのだろう。

 ライオネルは壁に追い詰めたエイミーの手をむんずと掴む。

「屋上がいいんだろう? 確かに屋上はあまり人がいないから静かだな。行くぞ」

 こうなればもう従うよりほかはない。逆らったらもっと怖い思いをしそうだからだ。

 エイミーはがっくりと肩を落として、ライオネルに引っ張られるまま、屋上への階段を上る。

 ライオネルに掴まれている手首がすごく熱い。

 手首から、エイミーの早い鼓動が伝わっていないか心配になって、エイミーはじーっとつながれた手首を見つめる。

 思えば、ライオネルからエイミーに触れてくることはほとんどなかった。

 それこそ、ここ数日くらいなものだ。

(まあ、触れるって言っても、連行するためなんでしょうけど……。すごく機嫌悪そうだし……)

 誕生日パーティーの日の翌日から、ライオネルはすっごく機嫌が悪い。ずっと仏頂面で、ずっと眉間にしわが寄っている。

(もしかして……あのときのキスをわたしが拒んだから怒っているの?)

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