王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 誕生日パーティーの日、温室でキスをされた時のことを思い出して、エイミーは顔に熱がたまっていくのを感じた。

 エイミーにとっては二回目の――そして、ライオネルからされたはじめてのキス。

 でもあれは、ドキドキはしたけど、あんまり嬉しくなかった。それどころか悲しかった。怖かった。

 屋上に到着すると、ライオネルはそのままエイミーをベンチまで連れていく。逃亡を防止するかのようにエイミーの手首は持ったままだ。

「……殿下、片手がふさがっていたらお弁当を食べられませんよ?」

「逃げないと約束するのなら放してやる」

「逃げ、ないです。約束します」

 どちらにせよ、この距離では逃げ出そうとしたところですぐに捕まってしまう。

 エイミーは運動神経がいい方だが、負けず劣らずライオネルも運動神経がいいのだ。さらにライオネルは身長が高い分リーチがあり、足の速さでもエイミーが劣る。

 ライオネルは「まあいいだろう」と言って手を放してくれた。

 エイミーがカバンからお弁当箱を取り出すと、ライオネルも袋からサンドイッチの詰まった籠のようなお弁当箱を出す。

「……殿下、お茶は?」

「忘れた」

「じゃあ、わたしのをあげますね」

 エイミーはカバンから水筒を取り出すと、コップに入れてライオネルに手渡す。サンドイッチなら喉が渇くだろうから。

 ライオネルは興味深そうにコップを受け取り、小さく笑った。

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