王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
「いつかと逆だな」

 言われて、カフェテリアに連行された時に、ライオネルがお茶を持ってきてくれたことを思い出した。

 おかしくなってエイミーが笑うと、ライオネルが優しく目を細める。

 ドキリ、とエイミーの鼓動が大きく脈打った。

「なあ」

 ドキドキうるさい心臓の上をそれとなく抑えていると、ライオネルが優しい顔のまま言う。

「お前は俺が好きなんだろう?」

 ライオネル以外の人が言ったら自惚れにしか聞こえないセリフでも、彼が口にするとそう聞こえてこないから不思議だ。

 実際エイミーは「好き好き」言ってライオネルを追いかけまわしていたのだから、ライオネルにしてみれば事実確認をしているだけなのだろう。

 特別甘い響きもなく、淡々と訊ねられたエイミーは、ぱちぱちと目をしばたたいてから小さな声で「はい」と頷いた。嘘でも「嫌い」なんて言えなかったから。

 ライオネルは、ちょっと赤くなった。それは彼にしては珍しい反応だった。

「だ、だったら、どうして別れようなどと言った」

「それは……」

「好きなら別れる必要はないだろう?」

(……でも、殿下はわたしのことが嫌いでしょう?)

 エイミーは心の中でそう返した。

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