王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 エイミーは納得できずにむーっと口をとがらせる。

「わたし、殿下のために歌いたいです」

「……頼むからそれは、城の防音室で二人きりのときだけにしてくれ」

「つまり、わたしの歌声は誰にも聞かせたくないと?」

「なんでそうな――ああもういい、そう言うことにしてくれていいから、頼むから、俺の前以外で歌うな。いいな?」

「はい!」

 ライオネルはエイミーの歌が独り占めしたかったのかと、エイミーは盛大に勘違いをしてにこにこと笑った。そう言うことなら、大好きな人のお願いは叶えねばならない。

「当日はほかの人に聞かれないように小さな声で歌いますね。殿下、嬉しいですか?」

「ああとっても嬉しいぜひそうしてくれ」

 なんだかちょっと投げやりな言い方に聞こえなくもなかったが、ライオネルがぶっきらぼうなのはいつものことだ。きっと言葉通りとても喜んでいるに違いない。

 嬉しくなってすりすりとライオネルの胸に頬ずりすれば、よしよしと頭を撫でてくれる。

(わたし、一生このままでいたい……)

 両想い――

 それはなんて素敵な響きだろうかと、エイミーはうっとりと目を閉じた。





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