王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
「この学園に通う生徒や教師のみなさんならご存じだと思いますが、エイミー様は学園に入学してからと言うもの、毎日のようにしつこく殿下を追いかけまわしていらっしゃいました。殿下がそれに迷惑なさっていたにも関わらず、その行動をやめることはございませんでした。そんなエイミー様に殿下は辟易なさっていて、婚約を解消したいとお望みだったことをわたくしは知っています。そしてエイミー様は、婚約を解消したいと望む殿下を逆恨みして、このような行動に……。それしか考えられません! わたくし、そう確信しております! それの証拠に、エイミー様は倒れた殿下にいち早く駆け寄られました。きっと証拠を隠滅しようとしたのでしょう。そうに違いありません!」

 国王はぱちぱちと目をしばたたいた。

 それはパトリシアの強引な推理にあきれているように見えたが、講堂でパトリシアの話を聞いていた生徒や貴族の中には彼女の言い分を信じる者も出てきて、あちこちから同調する声や、逆に否定する声などが上がって、だんだんと収集がつかなくなる。

「静かに」

 国王が手をかざすと、いったんは静まったが、こそこそと言うささやき声は消えない。

「スケール伯爵令嬢。さすがにその推理は想像の域を出ていないのではないかな? 証拠がないとね」

「証拠は、学園の生徒の方々全員ですわ! 毎日毎日、エイミー様が殿下を追い回していることを皆様知っていらっしゃいますもの! そして殿下は嫌がっておいでなのです! だからエイミー様は、ピアノに毒針を細工したんですわ!」

 エイミーはそれを聞いて、ゆっくりとライオネルの側から立ち上がった。

「パトリシア様、一ついいですか?」

「なにかしら? 言い訳なさる気?」

 エイミーは舞台のぎりぎりまで歩いていくと、まっすぐにパトリシアを見下ろした。

「どうして、殿下が倒れた原因がピアノに細工された毒針だと思ったのでしょう」

「……え?」

「まだ、殿下が倒れられた原因は調べていません。殿下は朝から体調が悪かったですので、それが原因であるとも考えられるのに、どうして毒針だと思われたのですか?」

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