王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
☆☆☆

(くそあのモモンガめ、大勢の前で恥ずかしいことばかり言いやがって……!)

 倒れたふりをして目を閉じていたライオネルは、突然エイミーが「両想い」だのライオネルに「好きだって言葉をもらった」だの言い出すのを聞いて、ついに限界になって口を開いた。

「こらそこのモモンガ、やめろ! 話を脱線させてどうする‼」

 ライオネルが起き上がると、エイミーが驚いた顔をして、それからぷうっと頬を膨らませる。

「これは重要なことですよ! わたしと殿下は両想いなんです! ちゃんとそれをみんなに理解してもらわないとダメなんです! それに殿下、まだ起きちゃダメじゃないですか!」

 まるでこの場の目的は、ライオネルとエイミーが両思いだと周知することにあるような言い方だ。

(計画と違うだろうが、このバカ!)

 ライオネルは赤い顔でこめかみを押さえる。

 やれやれと舞台下に視線を向ければ、パトリシアが愕然と目を見開いていた。

 ウォルターはと言うと、肩を揺らしながら、必死に笑うのを我慢している。

「ライオネル……どういうことだ?」

 父が目を見開いてこちらを見ていた。

「詳しい話はあとでします」

 父には計画を知らせていなかったから、おそらく後から怒られるだろう。だが、計画が漏れるのを恐れて、必要最低限の人間――つまり、エイミーとウォルター、そして追跡魔術を張らせた魔術師以外には告げないことに決めたのは自分なので、説教は甘んじて受けねばなるまい。

 今回のこれは、犯人に自ら犯人だと名乗り出させるために打った芝居だったのだ。

 というのも、パトリシア・スケールが怪しいということは、音楽祭の数日前からわかっていたことなのである。

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