王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 ライオネルはエイミーが「話が通じないモモンガ」だと言うが、本当はエイミーだってわかっている。

 ライオネルは、エイミーのことがこれっぽっちも好きじゃない。

 婚約した五歳の時から、気持ちはいつも一方通行だ。

 ちょっとでもライオネルに好きになってほしくて、好きだ好きだと繰り返した。

 ずっと無視されていて悲しくて追いかけまわしたら反応が返ってきて――、それが嬉しくて、それから今日までそれを続けてきた。

 好きだと言い続ければ、態度で示し続ければ、いつか振り向いてくれるのではないかと思って。

 ――まあ、生来、少々……いやかなりぶっ飛んだ性格であるのは否めないが、一応、そういうことは理解できているのである。

(お父様たちは殿下を追いかけまわすのはやめなさいって言うけど、たぶんそれをやめたら、殿下の中でわたしはただの透明人間になっちゃうわ)

 ライオネルはエイミーに興味がない。それどころか嫌っている。エイミーが何もしなければ、ライオネルは頭の中からエイミーという存在を追い出すだろう。婚約しているから放っておけば結婚できるが、結婚してもきっとまったく顧みられない。

 エイミーにはそんなことは耐えられないのだ。

 だってエイミーは、ライオネルの心が欲しいのだから。

 だから鬱陶しがられても、追いかけまわすことはやめられない。


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