王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 シンシアは首を横に振って、それから駆けだした。

 シンシアに植木鉢の破片には触るなと言われたので、エイミーはパンジーだけを丁寧に拾い上げる。

 そして、それを抱えたままどこかに植える場所はないだろうかと視線を彷徨わせていると、前方からライオネルが歩いてくるのが見えた。

 ライオネルのクラスはさっきまで専門棟で授業だったので、戻ってくるところだろう。

「あ、殿下!」

「……何をしているんだ、お前?」

 ライオネルは、土ごとパンジーを持っているエイミーに怪訝そうに眉を寄せた。

「植木鉢が割れちゃって。あ、でも、パンジーは無事みたいですよ! 殿下のパンジーはわたしが責任をもって植えなおしますから!」

「待て、俺のパンジーってなんだ」

「なにってほら、殿下と同じ紫色」

「紫色だったら俺のものになるのか」

「はい」

「…………もういいモモンガ語は俺には理解できん」


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