王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
☆☆☆

 週末、エイミーはクッキー持参で城を訪れた。

 今日のクッキーはチョコミントクッキーだ。エイミーの手作りである。

 いつだったか、母に手伝ってもらってクッキーを焼いてプレゼントしたところ、ライオネルが「クッキーに罪はない」と言って全部食べてくれたことがあって、それ以来、エイミーはクッキー作りが趣味になったのだ。今でも、口では文句を言うが、持って行ったクッキーは全部食べてくれる。

「ここはモモンガの巣じゃない」

 衛兵に通されてライオネルの部屋に入ると、ライオネルは開口一番にそう言った。

 そう言いつつ、エイミーが来ても追い返さないあたりライオネルは優しい。

「殿下、クッキーです!」

「その辺に置いておけ」

「はい!」

 ライオネルが「食べてやる」と言ったと解釈したエイミーは、いそいそとクッキーの包みを開けてローテーブルの上に置いた。
 メイドがお茶を運んでくると、ライオネルがまず紅茶に口をつけてから、エイミーのクッキーに手を伸ばす。


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