王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
「去年はヴァイオリンだったのに、なぜ今回は声楽なんだ」

「ヴァイオリンは弦の張替えに出したから戻ってくるまで練習時間が取れないらしいです」

「そんなもの各家に一台は必ずあるだろうが!」

 音楽は貴族のたしなみとされている。中でもヴァイオリンは弾けて当たり前とまで言われているメジャーな楽器なので、ライオネルの言う通り、貴族ならばほとんどの家に置いてあるだろう。

 ちなみに、一昨年はクラスでもグループ分けをしてカルテット演奏にしたそうだが、時間がかかりすぎたからやめたそうだ。

 フルートやクラリネットは全員にいきわたるほどないし、今年は例年より練習時間が取れないため、オーケストラ演奏は練習に時間がかかりすぎて無理とのことで、無難なところで声楽に決まったらしい。

「やっぱりわたし、欠席した方がいいですか……?」

「音楽祭は授業の一貫だから無理だ」

 ライオネルはぐしゃぐしゃと頭をかいて、それから息を吐き出した。

「音楽祭の練習はいつからはじまる?」


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