王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
 放課後、エイミーはうきうきと城へ向かった。

 同じ方向へ向かうのだからライオネルの馬車に乗せてくれてもいいのに、同じ馬車に乗るとべったりとくっついて離れないから嫌だと言われて乗せてくれなかったのは残念だが、今日から三週間毎日ライオネルとお城デートできることと比べれば些細なことだ。

 城に到着すると、ライオネルがすでに指示を出していたのだろう、すぐに防音室へ通された。

 防音室にはピアノが一台置いてあって、ライオネルがピアノの前の椅子に座っている。

(もしかしなくても殿下が伴奏してくれるのかしら? 殿下のピアノ、久しぶりだわ!)

 ライオネルはどんなに頼んでもエイミーのためにピアノは弾いてくれなかったが、城で開かれるお茶会では、王妃に乞われて何度か披露していた。エイミーも王妃に誘われたお茶会で聞いたことがある。そのピアノを――いくらお願いしてもエイミーのためには弾いてくれなかったライオネルのピアノを、今日ここで自分だけが独占できるのだ。


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