王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
「ろいぽ~るえ~うこぱ~~~~~」

 自分がひどく滑稽に思えてきたが、伴奏しているライオネルをちらりと見れば、とても満足そうな顔をしている。いつも一小節――下手をすれば一音発しただけで止められるのに、今日はまったく止める様子もない。

 とても滑稽だが面白くなってきて、嬉しそうなライオネルにエイミーも気分が乗って来た。

 わけのわからない歌詞をルンルンで歌い終えると、伴奏を終えたライオネルが立ち上がって叫んだ。

「えらいぞエイミー‼」

 生まれてはじめてライオネルに褒められて、エイミーはぱああっと顔を輝かせた。

「えらい? えらいですかわたし!」

「ああ! 今のは一音も外さなかった‼」

「殿下、わたしはいつも音を外しません」

「お前……いや、まあ、ある意味ではそうなのか。俺ははじめてお前のことをちょっとだけ理解できた気がするよ」

「じゃあ――」

「好きにはなっていない」

「でもわたしは大好きですよ!」

 そして、ライオネルは「好きにはなっていない」と言ったが、はじめて褒めてくれたのだ、きっと「好き」へ向けて少しは前進してくれたに違いない。

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