王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
「それはそうと、昨日殿下が意味不明なことを叫んでいたって聞いたんだけど。……ええっと、そう、落とし穴よ。あんたに落とし穴に落とされたって、いったいどういうこと?」

「ああ、それ!」

 エイミーは途端に嬉しそうに破顔した。

 逆にシンシアは怪訝そうになる。

「なんで嬉しそうなの?」

「だって、殿下との縁は落とし穴が運んできてくれたんだもの!」

「はあ?」

 ますます訝るシンシアに気づきもせず、エイミーは胸の前で両手を組むと、うっかりと五月の高い空を見上げた。

「あれはわたしが五歳の時のことよ……!」


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