コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「あの…このポスター…色とかレイアウトも担当させて貰えて。あ、もちろん生川さんの手直しもすごく入ってるんですけど…」

「へえ、新人なのにすごいね。色は遠目に見てもすごくきれいで目を引くと思ったよ。俺、これ好き。」
蒼士が微笑んで言うと、水惟の表情がパッと明るくなった。

「ありがとうございます。深山さんにそう言っていただけると嬉しいです。」
(………)

「…なんで俺?デザイナーでもないのに。」

「あ、えーっと…え、営業さんの意見て参考になるので…」
なんとなく本音を隠したような物言いだ。

「あの…」
「ん?」

「いつか…私がADになれて、自信作ができたら…見てもらえませんか?」
「え?」
妙に先の長い、不思議な提案だった。

「いいよ。っていうか、どっちみち同じ会社のADと営業なんだから見ると思うけど。」
「あ、そうですよね…でも深山さんに見て貰えたら嬉しいです。ありがとうございます!」
水惟はにっこり笑った。
「………」
そして、蒼士の顔を観察するようにじっと見た。

「何?なんか付いてる?」

「え!?あ!すみません…!」
水惟は慌ててお辞儀をするとミーティングルームから退室していった。

(本当になんで俺?よくわからない子だな…)
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