コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「食後のコーヒーと紅茶をお持ちしました。」
飲み物が運ばれてきた。

「あの…コーヒーに付いてきたミルク、使わないなら貰ってもいいですか?」
水惟が言った。

「甘くないミルクティーが好きなんですけど、ミルクとかレモンとか聞かれなかったから貰い忘れちゃいました…」

「じゃあ、代わりに砂糖ちょうだい。」
「え?」

「俺、ブラック飲めないんだよね。」
蒼士が苦笑いで言った。蒼士のコーヒーにはなぜか砂糖が付いてこなかった。

「意外です。」
水惟は可笑しそうに「ふふっ」と笑った。
(………)


「俺、藤村さんのことが好きみたい。」
その日の帰り、車で水惟を自宅に送り届けた蒼士が言った。

「え……」
「その反応、どう取ればいいの?」

「え、えっと…私も深山さんに憧れているというか……す……すき……なんです…けど…でも深山さんは大人って感じで私は子ど—」

焦って早口になる水惟に蒼士は不意打ちのようなキスをして笑った。
「俺は藤村さんが思ってるよりガキだよ。」

「あ、あの…わたし、深山さんが思ってるよりほんとに子どもなので…」
「…もしかして初めてだった?」

恥ずかしそうに赤面して頷く水惟を、蒼士はたまらなく可愛いと思ってしまいギュッと抱きしめた。
「かわいい」

水惟は鼓動の音以外何も聞こえなくなってしまった。

「…みやまさん…あの…」
「ん?」

「…えっと…やっぱりなんでも…ないです…」

< 118 / 214 >

この作品をシェア

pagetop