コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

重み

「洸さん辞めちゃうんですね…」
会社内のカフェで水惟が寂しそうに言った。

洸が正式に独立を発表したのは、水惟が入社して二年が過ぎた頃だった。

「うん。でも深端とは仲良くやっていきたいって思ってるからさ、力になれることがあったら何でも言ってよ。水惟は俺の一番弟子だからさ。」
洸に言われると、水惟はニコッと笑った。


「生川さんに露骨に媚びてるよね〜」


どこからか声が聞こえた。おそらく油井か油井に近い若手社員だ。

「………」

「水惟、今の…」
「あー…気にしてないです。クリエイティブに入るってそういうことみたいだし。洸さんも昔はあったんじゃないですか?」
水惟は困ったように笑って言った。

「まあ…そうだけど…。蒼士は知ってるのか?」
洸が小声で言った。
「えっ!?」

水惟が慌てて赤面するのを見て洸は笑った。

「洸さん知ってたんですか…」
「お前らわかりやすいからなー」
蒼士と同じ返しをされ、洸が苦笑いで言った。

「でも深山さんには言わないでください。そういうことで心配されるのも特別扱いされるのも嫌なので…」
「うーん…まあ、水惟がそう言うなら…」

「…あ!そういえば洸さん、結婚もするんですよね。」
「え、うん…付き合って長いから今更って感じだけどな。」

「おめでとうございます。今度また蛍さんにもお会いしたいです。」
「うん、蛍も会いたがってたよ。」

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