コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「水惟って不器用な振りして、男に媚びるのが上手いんだね。」
ある日、化粧室で鉢合わせた油井に言われた。
相変わらずバッチリ化粧をして、華やかな印象だ。
「え?」
「入社した時から知ってたんでしょ?深山さんが社長の息子だって。わざとらしく知らない振りなんてしちゃって。」
「え!?本当に知らなかったよ。」
水惟は戸惑った声で言った。
「そうやって生川さんにも取り入ったんでしょ?それでちゃっかり水惟だけクリエイティブに配属されてるんだもん、ずるいよね。」
油井は悪意を隠さずに笑いながら言った。
「そんなことしてない。」
「隠さなくていいよ。いつから深山さんと付き合ってたの?ずーっと裏で贔屓されてたんでしょ?」
水惟は蒼士に仕事での特別扱いは絶対にやめて欲しいと伝えてある。
「そんなことない!そんなの、深山さんにも深端にも失礼だよ。」
「信じられるわけないじゃん。バッカみたい。最っ低。」
油井は吐き捨てるように言って、化粧室を後にした。
「………」
水惟は油井とのやり取りで“深山 蒼士”と結婚したということの持つ意味を理解し、左手の薬指に重みを感じた。
ある日、化粧室で鉢合わせた油井に言われた。
相変わらずバッチリ化粧をして、華やかな印象だ。
「え?」
「入社した時から知ってたんでしょ?深山さんが社長の息子だって。わざとらしく知らない振りなんてしちゃって。」
「え!?本当に知らなかったよ。」
水惟は戸惑った声で言った。
「そうやって生川さんにも取り入ったんでしょ?それでちゃっかり水惟だけクリエイティブに配属されてるんだもん、ずるいよね。」
油井は悪意を隠さずに笑いながら言った。
「そんなことしてない。」
「隠さなくていいよ。いつから深山さんと付き合ってたの?ずーっと裏で贔屓されてたんでしょ?」
水惟は蒼士に仕事での特別扱いは絶対にやめて欲しいと伝えてある。
「そんなことない!そんなの、深山さんにも深端にも失礼だよ。」
「信じられるわけないじゃん。バッカみたい。最っ低。」
油井は吐き捨てるように言って、化粧室を後にした。
「………」
水惟は油井とのやり取りで“深山 蒼士”と結婚したということの持つ意味を理解し、左手の薬指に重みを感じた。