コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「ところで…髪黒くしたり、結婚してから結構イメチェンしたね。結婚生活は順調?」

「えーっと…さすがにパーティーとかが多くてついていくのがやっとって感じですけど、結婚生活自体は楽しいです。」

「深山くんと一緒にいられるから?」

水惟は頬を赤くして、飲み物をゴクっと飲んだ。
氷見はクスッと笑った。

「幸せならいいんだけど、頑張りすぎて無理しないようにね。」


———ピコンッ
【今日何時に終わりそう?】
蒼士からLIMEが届いた。

【19:30くらいかな?】
ペンギンのスタンプをつけて返信する。

【エントランスで待ってるから一緒に帰ろう】
水惟は蒼士のメッセージで疲れが癒やされた気がしていた。


「ごめん、お待たせ!思ったより遅くなっちゃった。」
水惟が小走りにエントランスを出ると、蒼士が笑顔で迎えた。
水惟も嬉しそうに笑顔で応える。

「おつかれ。何かあった?」
「うん、修正のOKがなかなか出なくて。」
「そっか。今日はご飯食べて帰ろうか。」
「わーい」


「あ、見て、あの人が深山さんの—」


二人を見て噂をする声が耳に入る。

「………」
水惟の表情が微かに強ばる。

「別に悪いことしてるわけじゃないんだし、もう結婚したんだから堂々としてればいいんだよ。」
「うん…」

わかってはいても、しばらく続きそうな社員の好奇の目は水惟を憂鬱にさせた。
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