コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「それ、コンペ用のスケッチ?」
食事をしながら、蒼士が水惟のそばに置いてあったクロッキー帳を指して言った。

「輝星堂の、まずは企画の社内コンペなんだけど。」
「ふーん…。水惟、忙しそうだけど大丈夫?」
「うん。忙しいけど、企画考えるのはすっごく楽しい!あのね—」

蒼士が審査側にいないと言われているので、水惟は今考えている内容を蒼士に話して聞かせた。
楽しそうに話す水惟に、蒼士も微笑む。

「水惟の企画はいつも水惟らしいけど、ちゃんとユーザーの気持ちに寄り添ってるところが良いと思うよ。良い企画だから選ばれるといいね。」
「うん!」


社内コンペ・プレゼンの5日前

———コホッ…

水惟はベッドで寝たまま小さく咳をした。

「何度?」
「…37.1℃…」
ベッドに腰掛けた蒼士に促され、体温計を差し出した。

「じゃあ今日は会社休んだ方がいいな。」
「大丈夫だよ、微熱だから会社行く!」
水惟は蒼士の言葉にガバッと飛び起きた。

———コホッゴホ…

「ほら、咳も出てるしダメだよ。熱だってこれから上がるかもしれないだろ?」

「でも今いっぱい仕事が…コホッ…それにコンペの準備もあとちょっと…」

「水惟。仕事が忙しいって責任感があるのは悪いことじゃないけど、咳も出てる状態で出社して、他の人にうつしたらどうなる?」

「………」
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