コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
水惟の番
名前を呼ばれ、水惟は震える足でスクリーンの前に向かう。
その途中、どこからかヒソヒソと噂をするような声が聞こえてきた。
「………」
水惟はスクリーンの前でお辞儀をすると、パソコンの前に座った。
自分のファイルを開こうとして、水惟の手が止まる。
『深山さん?』
司会者の声が耳に届かないくらい、水惟の頭の中では色々な考えが巡っていた。
ついさっき乾が発表した内容と同じ物を後から発表すれば、自分の方が盗用だと思われるのではないか?
同じ内容を乾より上手くプレゼンできる自信がない。
何故、乾は自分の企画を盗んだのか?
氷見は気づいていて、先程の質問をしたのか?
そもそも自分の発表が好意的に受け取られるのか?
自分が同じ内容で発表したら、乾の立場はどうなるのか?
『深山さん?プレゼンを始めてください。』
「…あ…え、と…」
額には冷や汗が滲む。
「え…と…」
室内にいる全員の視線が突き刺さるようだった。
———クスクス…
固まる水惟を嗤うような声が聞こえ、水惟の頭は真っ白になった。
『深山さん?』
「…あ、あの……すみません、今回のコンペ…準備不足でした…辞退…します…」
水惟はか細い声で振り絞るように言うと、自分のファイルを削除して元いた席に戻った。
「ダサ…」
油井の声が聞こえたが、今の水惟にはもうあまり意味の無い悪意だった。
その途中、どこからかヒソヒソと噂をするような声が聞こえてきた。
「………」
水惟はスクリーンの前でお辞儀をすると、パソコンの前に座った。
自分のファイルを開こうとして、水惟の手が止まる。
『深山さん?』
司会者の声が耳に届かないくらい、水惟の頭の中では色々な考えが巡っていた。
ついさっき乾が発表した内容と同じ物を後から発表すれば、自分の方が盗用だと思われるのではないか?
同じ内容を乾より上手くプレゼンできる自信がない。
何故、乾は自分の企画を盗んだのか?
氷見は気づいていて、先程の質問をしたのか?
そもそも自分の発表が好意的に受け取られるのか?
自分が同じ内容で発表したら、乾の立場はどうなるのか?
『深山さん?プレゼンを始めてください。』
「…あ…え、と…」
額には冷や汗が滲む。
「え…と…」
室内にいる全員の視線が突き刺さるようだった。
———クスクス…
固まる水惟を嗤うような声が聞こえ、水惟の頭は真っ白になった。
『深山さん?』
「…あ、あの……すみません、今回のコンペ…準備不足でした…辞退…します…」
水惟はか細い声で振り絞るように言うと、自分のファイルを削除して元いた席に戻った。
「ダサ…」
油井の声が聞こえたが、今の水惟にはもうあまり意味の無い悪意だった。