コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
それから、水惟はまた細々とした案件をこなしていった。
目立たない立場になることで自分が噂の対象から外れられる気がして、これはこれで良かったのかもしれない…と考えるようにした。
案件が多く、作業に没頭することで嫌なことを考えずに済むような気もしていた。

「んー…なんかしっくりこないね。」
水惟のデザインをチェックしていた氷見が難しい顔で言った。

「水惟らしくないっていうか…なんだろうなぁ…」
「いつも通りにデザインしたんですけど…ちょっとマンネリでしたか?」
「いや、そういうわけでもないんだけど…」
「もう一回考えてみます…」
氷見は手元に残された水惟のデザインをじっと見つめた。

このところ、水惟のデザインがダメ出しされることが増え始めていた。
それと比例するように水惟の溜息が増え、食事の量は相変わらず減り続けていた。


しばらくすると、輝星堂の広告デザインが社内に発表された。

「え…?」
デザインを見て唖然としていたのは蒼士だった。

社内資料に記載されたADの名前を確認して、また唖然とする。

蒼士はすぐにスマホから内線電話を掛けた。
『はい』
「あ、氷見さん?ちょっと話があるんですけど、お時間いいですか?」
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