コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
水惟は会社やデザインの学校に行くのは諦めたようだったが、それからも毎日遅くまで自室でデザインのリハビリのようなことを続けていた。そんな水惟を見て、蒼士にはある思いが芽生えていた。

——— でも…それじゃあ蒼士に…

(水惟を追い詰めてるのは…)


蒼士は会社から洸に電話をかけた。
「洸さん、今少しお時間良いですか—」


数日後の夜
「水惟、話があるんだけど。」
いつも通り自室でパソコンに向かっていた水惟を蒼士がリビングに呼び出した。
二人はソファの角を挟むように座った。
いつもなら隣に座るはずの蒼士がそうしたことに水惟は違和感を覚え、何か大事な話が始まるのだと理解した。

「「………」」

しばらく重苦しい沈黙が続いた後、蒼士が咳払いをして話し始めた。

「水惟、今から話すことを最後までちゃんと聞いて欲しい。」

「…はい。」

蒼士が水惟の()を見据えると、水惟も戸惑いながらも蒼士の瞳を見て応えた。

「単刀直入に言うけど—」
「………」


「俺と離婚して欲しい。」
< 169 / 214 >

この作品をシェア

pagetop