コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
翌日
泣き疲れて深い眠りについていた水惟が昼過ぎに目を覚ましリビングに向かうと、テーブルの上には夫の欄に記入済みの離婚届が置いてあった。
昨夜の話が現実だったことを突きつけられ、水惟は気持ちのやり場に困ってしまった。
昨夜の蒼士は自分を好きだと言ってくれていたが、それが本心かどうかを確かめる術が無い。
こんな風にあっさりと離婚届に判を押されると、本当は面倒になって別れたいと思ったのではないかと疑ってしまう。

信じたい気持ちと悲しい気持ちに挟まれ、水惟の目からはまた静かに涙が溢れた。

それでも、記入済みの離婚届を見てしまえば別れなければいけないと頭が理解してしまい、水惟も妻の欄に記入した。



帰宅した蒼士は水惟も記入した離婚届を見て、ホッとすると同時に切なそうな表情をした。

「話…いいですか…?」
ドアの音に反応して部屋から出てきた水惟が蒼士に言った。

今回はダイニングテーブルに向かい合って座った。
昨日までとは違う距離感を二人はそれぞれに感じていた。

「今後のこと…会社とか、引越しとか…そういう話をしたくて…」
「家は深山が所有してるマンションの好きなところを—」
水惟は首を横に振った。

「いらないです…深山の部屋に住んでたら、いつまで経っても思い出しちゃうから…」
「別に思い出したっていいだろ?5年間の話だ。」

「…それは…今、あなたが一方的に言ってるだけで、正直信じきれないから…ちゃんと自分で部屋を借りて自立します。」
「………」
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