コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「実際に再会したら…本当に忘れてるみたいで…」
「………」

「ショックだったけど、記憶障害のことを少し調べたんだ。大きなストレスで記憶障害になることがあるって。ストレスの元になる記憶を忘れようとするんだって。」
「え…」

「だからさ、水惟にとって…俺はストレスなんだよ。」
「ストレス…?」

「だから、もう俺は水惟と恋愛も結婚もしない。水惟には一デザイナーとして深端に帰ってきて欲しい。」
「………」


「また…勝手に決めてる…」
水惟がポツリと言った。

「え…」

「だって…私はまた、蒼士のことが好きになっちゃったのに…この気持ちはどうすればいいの?」

「水惟、それは—」
「それに私は—」

「深端には戻りたくない。」

「え、何言ってるんだよ。水惟には深端でやりたいことがあったんだろ?」
蒼士の言葉に水惟は首を横に振った。

「ううん…たしかに、深端でしかできないことがあったから必死で頑張って深端に入ったけど…今は…多分それは深端じゃなくてもできるの。」
「え…」

「だから、私は深端には戻らない。」

水惟は蒼士の目を見て言った。
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