コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
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10年前

壽野美術大学(ひさしのびじゅつだいがく)・視覚情報グラフィックデザイン科

「藤村さんて本当にデザイン事務所で就職探すの?」
大学3年の水惟は教授に呼び出され、進路について聞かれていた。

「はい。そうですけど。」
水惟はなんでもないことのように答えた。
この頃の水惟はショートカットで今とは随分印象が違う見た目をしていた。

「勿体無いな〜。正直、今のこの科では一番あなたに期待してるのよ?大手の広告代理店だって狙えるんじゃない?」

「うーん…デザインだけなら…もしかしたらそうかもしれないですけど…面接とかが無理なんじゃないですかね〜。みんなギラギラしてそうです。」
水惟は苦笑いで言った。

「受けるのはタダなんだから、先に諦めるのはもったいないでしょ。今度深端の会社説明会があるから、それだけでも行ってきなさい!」

「みはし…?」

「も〜!深端グラフィックスくらい知っててよー!生川 洸とか知らない?」

「あ、その人は知ってます。輝星堂のキャンペーンの人!」
「その生川さんもいる会社よ。興味湧いた?」
水惟はポカンとして小首を傾げる。

「もー!会社説明会、行かなかったら単位あげないわよ!」
「え!横暴ですよー!アカハラ〜!」
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