コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

On a date : Morning

約束の日

初日で混むかもしれないという理由で、二人は早めの10時に待ち合わせをしていた。

水惟は結局待ち合わせ場所が思い浮かばず、自宅マンションの前でドキドキしながら蒼士を待っていた。

(深山さんと二人きり…車…)

(えっと、まずは挨拶、で、誘ってくれたことと車のお礼…えっと…コンビニに寄ってもらって飲み物は私が買って…あとはギャラリーまでのナビ…?)

憧れている蒼士と出かけること、それが何かのテストかもしれないことで、水惟の頭は昨晩からぐるぐるとフル回転していた。

しばらくすると、水惟の前に一台の車が停まった。水惟にもなんとなく高級そうだとわかる海外メーカーの黒いSUVだ。
当然、運転席から現れたのは蒼士だった。

「おはよう。」
蒼士は仕事の時と違い、前髪が下りている。

朝から爽やかな笑顔だなぁ、と水惟は一瞬見惚れてからハッとする。

「お、おはようございます。えっと今日はありがとうございます。車のお誘い…」
「車のお誘い?」
テンパったような水惟に蒼士は笑って言った。

「わ…すみません!変なこと言っちゃった…お誘いいただいたのと、車を出していただいて…って言いたかったんです…」

(やっちゃった…)
水惟は失敗の気恥ずかしさで顔を赤くした。
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