コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
二人は公園内にあるレストランのテラス席に案内された。

「本当に恥ずかしいです…すみませんでした…」
水惟は勘違いをあらためて謝罪した。

「もういいって。」
「でも、すごく失礼だったなって…」

「藤村さんて勉強熱心なんだな、とは思ってたけど。」
蒼士は少しいじわるっぽく笑って言った。

「…“もう行った”って嘘だってバレてたってことですよね…」
水惟はしゅんとして言った。

「展覧会も映画も好きなんですけど…本当は最終日まで忘れてて慌てて駆け込むような人間なんです…。でもお陰で最近はいろいろ行ってインプットがすごく増えました…」

「今日の展示はどうだった?」
申し訳なさそうにしている水惟に蒼士が聞いた。

「私、夜空の絵が好きでした!色合いがきれいで細かいところまで描き込まれてて。洋館の雰囲気にも合ってて、いつかあそこでプラネタリウムイベントとかしても楽しいんじゃないかなって想像しちゃいました。」
水惟が目をキラキラさせて話すので蒼士は思わず笑ってしまった。

「藤村さん、よくしゃべるんだね。」
「え…あ、えっと…感動しちゃって。」
水惟が照れくさそうな顔で言った。

「それに…深山さんと来れて嬉しくて。…もっと早く誘いに乗ってれば良かったです。」

そう言った水惟の無邪気な笑顔に蒼士の胸が思わずキュンとしてしまった。

———コホッ
蒼士はそれを誤魔化すように小さく咳払いをした。

「…また来ればいいんじゃない?」
「……はい。」
水惟はまた、恥ずかしそうに笑った。

「食後のコーヒーと紅茶をお持ちしました。」

飲み物が運ばれてきた。
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