コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
帰りの車の中

「カメラマンは鴫田(しぎた)さんにお願いするつもりだから。」

「え、鴫田って…メーちゃん?」
「うん」
蒼士の言葉に水惟が珍しく嬉しそうに反応する。今日も座っているのは後部座席だ。

鴫田 芽衣子(しぎた めいこ)は深端グラフィックスのカメラマンで、水惟が昔よく一緒に仕事をした同年代の元同僚だ。

「メーちゃん…」
(メーちゃんも4年振りだ…)

冴子や芽衣子のような、深端時代に仲の良かった仲間とは深端を辞めてから疎遠になってしまっていた。
水惟の嬉しそうな声を聞いて、運転席の蒼士は安心したような申し訳なさそうなような、複雑な顔をしていた。

*** 

2週間後

「あー本当に水惟だ。」
järviで芽衣子が嬉しそうに言った。

芽衣子は背が高く黒髪のショートカットにパンツスタイルでマニッシュな雰囲気だ。

「メーちゃん、久しぶりだね!」

「水惟が全然連絡くれないからでしょー薄情者ー!水惟ちょっと雰囲気変わったね。髪の色が変わったからかな?」
「うん、深端で働いてた最後の方は真面目な感じの黒髪だったからね…今の方が若造りかも…」
水惟が照れ臭そうに言った。

「全然そんなことないよ、今の水惟の方が元気そうでイケてる。」
芽衣子の言葉に、水惟は「えへへ」と笑った。
(………)
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