コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
水惟と啓介も二人で話していた。

「ねえ、水惟とあの深山って人、なんかあんの?」

「え…」
水惟の表情が固まる。

「わっかりやすいな〜。何、水惟の好きな人?」
「違う…」

「え?じゃあまさかの元彼?イケメンじゃん。」
水惟は首を小さく横に振る。

「……元……夫…なの…」
水惟は小さな声でボソッと言った。

「えぇ〜っ!?」

啓介が驚きの声をあげた。

「ちょっと、アッシー!声大きいよ!」
「水惟ってバツイチなん!?」

「え…知らなかったんだ…」
「知らなかった。水惟って男に免疫無いのかと思ってた。へぇー意外すぎる。つーか、あれが元旦那ってのも意外だな〜。」
啓介が芽衣子と話す蒼士を見ながら言った。

「え…」

「だってスーツでバリバリ仕事できる大人って感じじゃん。水惟と全然タイプ違うよな。」
「……え……あ…だから…上手くいかなかったのかな…」
どことなく表情が暗くなった水惟を見て、啓介はフッと笑った。

「ひょっとしてまだ好き?」

「え!?」
水惟は思わず赤面して首を横に振った。

「ありえない!」

「ふーん…」
啓介は水惟を見下ろすようにニヤニヤと笑っている。

「ちょっとアッシー…!」


(アッシーは何も知らないからそんなこと言えるんだよ…)

——— 結婚なんてしない方が良かった

(………)
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