コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「深山さん、なんかイラついてます?」

蒼士と芽衣子は機材を積んだ車で一緒に深端の本社に戻ろうとしていた。
助手席の芽衣子が蒼士に聞いた。

「べつに」

「ほら〜!行きより明らかに無口だし。」
「………」

「どこで?やっぱりアッシーが水惟にキスしたところ?それとも水惟のLIME聞きそびれたところ?あ、アッシーが水惟に褒められたところ?」
芽衣子はどこか嬉しそうだ。

「………」
前を見たまま無言の蒼士は、平静を装ってはいるが不機嫌そうだ。

「水惟のLIME、深山さんに教えていいか聞きましょうか?」

「絶対断られるだろ…」
蒼士はボソッと言った。

「えー深山さんでもそんな弱気なこと言っちゃうんだ〜」

「…だいたい…水惟が思い出さなきゃ何の意味もないんだよ…」
ニヤニヤする芽衣子に、蒼士はヤケクソ気味に溜息混じりでつぶやいた。

「なんかよくわかんないけど、複雑なんですね。」
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