コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「うーん…なんか啓介くんは恋愛の駆け引きとかしそうだよね〜。探り合いみたいな?水惟ちゃんそういうの大丈夫?」
蛍が言うと、水惟は無言のしかめっ面で首を横に振った。

「そんなの想像じゃん。」
啓介が不満そうに言った。

「ふーん…じゃあ啓介くんが今までの彼女と別れる時に言われたセリフって何だっけ?」

「えー?『何考えてるのかわかんない』『いつも試されてる感じがして怖い』『マイペースすぎ』『チャラすぎ』とか?ははは」
啓介は次々浮かんでくる自分を罵る言葉に自分で笑った。

「ほら〜。そんなんじゃ大事な水惟ちゃんを任せられません。」
「蛍ママ〜」
水惟が冗談まじりに蛍にしがみつくと、蛍が「よしよし」と頭を撫でた。

「まあいいや、水惟はまだ深山さんに未練があるみたいだし。」
啓介は鼻で軽く溜息を()いて言った。

「そんなことないって言ってるでしょ!」
水惟が少し語気を強めて否定した。

「そうやってムキになって否定するとこがさあ〜」
「啓介くん、ダメだよ。」
蛍が啓介を(たしな)めるように言った。

「でもさぁー休憩だって言ってるのに水惟、仕事しちゃってるじゃん。」

水惟はゼリーを食べながら、クロッキー帳に早速järviのロゴのアイデアスケッチを始めていた。

「深山さんが持ってきた仕事だからなんじゃないの?」
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