コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
高鳴り

2日後
リバースデザイン

「あれ?みんなは?」
出勤した水惟は事務所に一人で居た蛍にたずねた。

「取材とか営業とか展示会見学でみ〜んな外出中。」
「ふーん。なんか珍しいですね、デザイナー組はみんなあんまり外出ないのに。」

そんな日もあるのか、と水惟はたいして気にせずパソコンに向かった。
今日は蒼士とのアポがあるので、どちらかと言えばそれが気になっている。

(わざわざ来なくても…オンラインミーティングとかでも良い気がするけどな。深端の営業部長ってヒマなの?)

ここのところの顔を合わせる機会の多さに小さく溜息を()いた。

———ブー…ブー…
しばらく二人で仕事をしていると、蛍のスマホが鳴った。

「はい…え!」
電話に出た蛍が慌てた様子を見せる。

「はい、はい、すぐに向かいます。すみませんがよろしくお願いします!」
それだけ言うと、蛍は電話を切った。

「ごめん水惟ちゃん、灯里(あかり)が熱出しちゃったって保育園からの連絡だった。病院に連れて行ったら今日はその後テレワにする。」
「え、灯里ちゃん大丈夫ですか?」
「よくあることだから大丈夫だと思うけど…」
蛍は急いで荷物をまとめた。

「水惟ちゃん一人になっちゃうけど大丈夫?洸には連絡入れておくけど。」

「大丈夫ですよ〜子どもじゃないんだから。電話も来客もバッチリ!早く灯里ちゃんのところに行ってあげてください。」
水惟は親指と人差し指で丸を作ってみせた。
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