コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

水惟らしいスピーチ

「…あの…っ」

日が暮れたjärviからの帰り道、水惟は前を歩く蒼士に思い切って声をかけた。

「ん?」
「あの…えと…時間大丈夫だったら、お茶…しませんか…?」
水惟の意外な言葉に、蒼士は驚いた表情を見せた。

「あ…忙しかったら大丈夫です…急に変なこと…」
「いや、今日は直帰の予定にしてるから大丈夫だよ。」
気まずそうな水惟に、蒼士は微笑んで言った。

(この人とちゃんと話さなきゃ…何もわからない…)

水惟は思い出せない4年前のこと、とくに離婚の理由をはっきりさせたいと思っていた。

二人が訪れたのは【El agua(エル アグア)】という、カウンター席がメインのカフェというよりは喫茶店やバーという雰囲気の店だった。
店内にはコーヒーの香りが漂い、程よい音量のジャズが流れているのでカウンターでも周りを気にせず会話がしやすい。
二人はカウンター席に隣同士で座った。

「aguaブレンドと紅茶を。紅茶にミルク、付けてください。」
蒼士がカウンター越しに注文した。

「チーズケーキあるけど食べる?」
水惟は首を横に振った。

しばらくして飲み物が提供されると、水惟はひとくち口に含んだ。

(………)

どう切り出したものか…と悩んだが、ストレートに聞くことにした。

「…あの…深山さんに聞きたいことがあって…」
「…うん。」
蒼士は水惟の方に上半身を向けた。
蒼士にはなんとなくその先の質問がわかっているようだ。
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