コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
気持ちと記憶
受賞スピーチ
夕日広告賞・授賞式会場
「ガッチガチじゃん。」
緊張で顔を強張らせる水惟に、正装をした啓介がいつもの調子で揶揄うように話しかけた。
「だ だって…か、会場広いし…人が…」
授賞式はそのまま同じ会場での祝賀パーティーになるため、ホテルの大広間で執り行われていた。
広間の一番奥に表彰用のステージがある。
広間には水惟の予想以上に大勢の人がいて、みんな正装をしているせいか偉い立場の人に見えてしまう。
(こんなところでスピーチなんて…)
「水惟ちゃん。」
「蛍さん!洸さん!」
生川夫妻は揃って出席していた。
二人に会って水惟は少しだけホッとした。
「蛍さんきれ〜」
蛍は大人っぽい黒のマーメイドラインのドレスを着ている。
「水惟ちゃんも髪がアップでいつもより大人っぽいね。そのドレス、とってもよく似合ってる。」
「でもこれ…昔のヤツなの。ひさびさに着た。」
水惟は照れ臭そうに言った。
蒼士と結婚していた頃はパーティーに出席する機会も多かったため、何着もドレスを持っていた。
しかし離婚してそんな機会もあまり無くなったので、水惟は持っていたドレスをほとんど処分してしまったが、このミルクティー色のシルクのワンピースだけはなぜか手放さずにずっと大切にしまってあった。
デコルテがスクエアに開いた大人っぽいデザインだ。
(他のドレスを処分したときのこともそんなにはっきり覚えてないけど…なんでこれだけ?…おかげで今回買わずに済んで助かったけど…)
「ガッチガチじゃん。」
緊張で顔を強張らせる水惟に、正装をした啓介がいつもの調子で揶揄うように話しかけた。
「だ だって…か、会場広いし…人が…」
授賞式はそのまま同じ会場での祝賀パーティーになるため、ホテルの大広間で執り行われていた。
広間の一番奥に表彰用のステージがある。
広間には水惟の予想以上に大勢の人がいて、みんな正装をしているせいか偉い立場の人に見えてしまう。
(こんなところでスピーチなんて…)
「水惟ちゃん。」
「蛍さん!洸さん!」
生川夫妻は揃って出席していた。
二人に会って水惟は少しだけホッとした。
「蛍さんきれ〜」
蛍は大人っぽい黒のマーメイドラインのドレスを着ている。
「水惟ちゃんも髪がアップでいつもより大人っぽいね。そのドレス、とってもよく似合ってる。」
「でもこれ…昔のヤツなの。ひさびさに着た。」
水惟は照れ臭そうに言った。
蒼士と結婚していた頃はパーティーに出席する機会も多かったため、何着もドレスを持っていた。
しかし離婚してそんな機会もあまり無くなったので、水惟は持っていたドレスをほとんど処分してしまったが、このミルクティー色のシルクのワンピースだけはなぜか手放さずにずっと大切にしまってあった。
デコルテがスクエアに開いた大人っぽいデザインだ。
(他のドレスを処分したときのこともそんなにはっきり覚えてないけど…なんでこれだけ?…おかげで今回買わずに済んで助かったけど…)