コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

蒼士の提案

——— また…あなたのことが好きになっちゃったみたい…です…

「………」
水惟の告白を聞いた蒼士は、一瞬驚いたような表情(かお)をすると黙ってしまった。

水惟の耳には自分の心臓がバクバクと鳴る音しか聞こえない。

「…葦原くんと付き合ってるのかと思った。」
蒼士が口を開いた。

「え…」

「撮影の時とか、この間リバースに行った時とか、仲良さそうにしてたし… 葦原くんにもスピーチの相談したんだろ?」

水惟は首をぶんぶんと横に振った。

「ちが…アッシーとは…たしかに仲は良いけど、あくまでも同僚だし!全然そんなんじゃない…」
水惟は誤解を解こうと必死に否定する。

「…でもお似合いだよ。」
「え?」

「パーティーでも楽しそうに話してたし、撮影の時に鴫田(しぎた)さんも言ってたじゃん、カップルっぽいって。」
蒼士は水惟の目を見ずに言った。

(…これって…)

「…えっと…わたし…フラれたって…思えばいい…のかな…」
水惟が声を震わせて言った。

「………」
蒼士はまた無言になった。

「…さっき家まで送るって言ったのは、水惟に大事な話があったからなんだ。」
「大事な…はなし…?」

「水惟—」
蒼士が水惟の目を見た。


「深端に戻って来ないか?」

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