コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—

冴子と芽衣子

「再会と、水惟の夕日広告賞受賞を祝して—」

「「かんぱーい」」

とある金曜日、水惟は冴子と芽衣子と約束していた食事会に来ていた。
バルのような居酒屋の個室で4年以上ぶりの乾杯をした。

「水惟と飲むの超ひさびさ〜!」
芽衣子が言うと、水惟は少しバツが悪そうに「えへへ」と笑った。

「この間の撮影のときも言ったけど、元気そうで安心した。」
「そうね〜、私も水惟が元気で安心したわ。」
冴子も言った。

「それ…」

「ん?」
芽衣子が水惟を見る。

「なんか最近みんな言うの。」
「みんな?」

「冴子さんも、メーちゃんも…深山…さんも、それに洸さんとか洸さんの奥さんも…“元気そうで安心した”とか“水惟が元気なのが一番”みたいな…」
ここ最近、水惟が気になっていたことだった。

「私って、その…4年くらい前…そんなに元気無かった?」

「「………」」

水惟の質問に、二人は一瞬無言になった。

「ぁ…当ったり前じゃない!」
口を開いたのは冴子だった。

「だって離婚もして、引越と転職もしたのよ〜?いつも疲れた顔して元気無さそうだったんだから。目にクマなんか作っちゃったりして。」
「…そっかぁ…あんまりよく覚えてなくて…」

「だから、みんな今の水惟が元気で笑ってるのが嬉しいのよ。」
冴子も芽衣子も暖かい表情で微笑んだ。
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