腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



「意味わかんない!」



おかしいでしょう。そもそも「渡して頂きます」って言ったって、奏多くんが私からバレンタインチョコなんて受け取るわけがないのに。

抗議の声を上げてみたけれど、鷹司はその言葉を撤回する気配を見せない。




「バレンタインという特別な日に、恋仲の二人の間に立ちはだかる。まさに悪役令嬢らしい行動でしょう?」


「嫌よ。受け取ってもらえなくて恥かくだけじゃない!」


「それに、これはお嬢様が彼への想いを断ち切る良い機会になるのでは?」




言葉に詰まった。

なるほど。それが目的なのね。


クリスマスイブの日。

私は葉澄とデートをしていた奏多くんの姿を見て、酷く動揺した。

二人が付き合っていることは知っていたのだから、動揺するはずがなかった。なのに動揺したのは、きっとあの瞬間まで真実味がなかったからだ。

自分が既に失恋していることの真実味が。

私自身が告白をしてフラれたわけじゃない。それもあって、まだ上手く心の整理が付けられていなかった。


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