腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
バレンタインデーにチョコを渡すという、それだけで告白の意味を持つ行動を取ることは、確かに一つの区切りになるのかもしれない。
「……わかったわよ」
むっと唇を結びながらも、私は結局ゆっくりとうなずいてみせた。
……でもやっぱり、せっかく用意したチョコレートを受け取ってもらえなかったら恥をかく……ていうか、すごく悲しい。
だから、一つ決心した。
「こうなったら、何が何でも奏多くんにはチョコを受け取らせてやるわ! 手段は選ばないからね!」
「少々物騒ですが、素晴らしい心意気でございます」
バレンタインデーまではおよそ二週間。
ここからが戦いだ。
「ところでお嬢様。近年は友人同士でチョコレートを交換する“友チョコ”なるものが定番となっているのをご存知ですか?」
「……知らない」
「柳沢様とは別に、『心から仲良くなりたいと思っている友達』にバレンタインチョコを渡してみるのはいかがでしょうか」
鷹司は食器を下げる傍ら、そんな謎のアドバイスを残した。