腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「はあ? 馬鹿じゃないの?逆に止める権利はあなたにしかないわよ! ……ああなるほど。奏多くんが私にチョコを渡されたぐらいじゃ靡かないって自信があるわけね」
「そういうわけじゃないけどっ!……ダメって言っても渡すでしょ、きっしーさん」
「当然」
私ははっきりと言い放つと、軽く咳払いをして声を整えた。
それから、じゃあ聞かないでよと言いたげな葉澄に向かってさりげなく言った。とてもさりげなく。
「まあでも? 仕方ないからあなたにも何か買ってあげても良くてよ、葉澄?」
「え?」
「奏多くんへのチョコを買うついでに何か買ってきてあげるって言ってるのよ!」
きょとんとした顔で私を見ながら、葉澄は何度かパチパチとまばたきをして、やがてポンと手を叩いた。
「友チョコってこと?」
「なっ、違っ……あ、あなたみたいな一般家庭の娘なんて、どうせ安物のチョコしか食べたことないでしょ? 可哀想だからちょっと良い物を恵んであげるって意味よ! 希望があるなら言いなさい!」