腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
別に鷹司の言っていた、『心から仲良くなりたいと思っている友達』にバレンタインチョコを渡してはどうか、というアドバイスが頭に残っていたとか、そういうわけじゃない。断じてない。
ぎろりと睨めば、葉澄は慌てたようにスマートフォンを取り出して何かを調べ始める。
しばらく画面を見つめた後、「じゃあこれがいい!」と画面を私の方に向けた。
「……あなた、そんな顔して意外と遠慮しないわよね」
「え?」
画面に映っていたのは、一箱7,000円する有名チョコブランドのトリュフだった。
そのチョコは確かにキラキラして綺麗。葉澄は値段なんて全く見ないで、そのビジュアルだけで選んだらしい。
改めて画面を見た葉澄から悲鳴が上がる。
「高っ!! 何これ1桁間違えてない!? ごめんねきっしーさん、今のなし……」
「ふん。まあ一応気に止めておいてあげるわ」
バレンタインというイベントに参加した経験のない私には、普通はどんなチョコレートを渡すものなのかがよくわからない。
でもとりあえず、葉澄の場合このトリュフなら喜ぶという確証を得た。