腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め




「鷹司、この家にある手作りスイーツの本を全部持ってきなさい」


「こちらに」



学校から帰るなり、屋敷の厨房を陣取った私。

おろおろするシェフを追い出して、入れ替わりに入ってきた鷹司に命じれば、彼は既に10冊近くのレシピ本を持っていた。たぶんシェフの私物だ。



「お嬢様、失礼ですが料理の経験は?」


「あるわよ。学校の調理実習はちゃんと参加してたもの」


「自信満々に『ある』と答えるには弱い経験でございますね」


「うるさいわね大丈夫よ。この本に書いてある通りにすればいいんでしょ?」



さすがはうちの厨房。基本的な道具や材料はきちんとそろっている。

レシピ本をパラパラ眺めながら、手順が少なそうなものを探す。とりあえずガトーショコラを作ってみることにした。



「ええっと、まずはチョコレートを湯せんで溶かす……湯せんって何かしら。チョコをお湯に入れるってこと?」


「いえ。チョコレートを入れたボウルを、それより一回り大きなお湯を張った鍋などにつけて、間接的に温めることでございます」




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