腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「お嬢様」
「黙ってて。できるから」
「ですが」
「できるってば。ほら、ちゃんと黄身だけ分けられたわ。次は卵白に砂糖を入れて……」
「……今お手に持っているものをよく観察してみることをおすすめします」
「は? 何言って……」
私は不審に思いながらも、持っているシュガーポットに目を向ける。
シュガーポットには、「salt」と書かれたラベルが貼られていた。
「……隠し味よ」
強がってみせつつ、素直に調理台へ塩を置いた。
私が改めて砂糖を量り入れる間、何とも言えない静かな空気が流れる。
「鷹司」
「はい」
「……ちょっとだけ手伝わせてあげてもいいわ」
悔しさに唇を噛み締める。
鷹司は何事もなかったかのように、「承知いたしました」と静かに頭を下げた。
──そして数十分後。
厨房には、甘くて美味しそうな香りが充満していた。
「冷めた後で粉砂糖を振りかけたら完成でございますね」
「ふふん、完璧。どんなもんよ」